こんにちは、賃貸営業中村です。 本日は賃貸住宅の今昔のお話を。 最近は通勤の行き帰りに、ワイヤレスイヤフォンを付けることが多くなりました。ちなみにこのワイヤレスイヤフォン、Bang&Olufsen社製でベラボウに良い音で鳴りやがるんです。そのベラボウに音の良いイヤフォンで何を聞いているかと申しますと・・・ 落語を聞いています。 時々プッと吹き出したり、ニヤニヤ笑ったり、場合によっては涙ぐんだりもするので、周囲の乗客はおそらく不気味に思っていると思います。 僕が落語にハマっているというお話は 先日のブログでお伝えした通り。同じ噺でも縁者によってまったく解釈・表現が違うのがたまらない魅力です。艶っぽい「艶笑噺」、笑わせておいて、ちょいちょい泣かせにかかる「人情噺」などたくさんのジャンルがありますが、中でも興味深いのが「長屋噺」です。 長屋とは言わば賃貸住宅。今でいうアパートです。そこに描かれる江戸時代の賃貸住宅事情は、不動産賃貸業界で働く僕にとっても、興味深いお話です。 江戸時代の長屋は全て風呂なしトイレ共同。表通りに面した「表長屋」は4畳和室8畳和室に土間が付いた土間付き2Kで、4畳間と土間部分を使って商売も出来ました。言わば店舗兼用住宅です。 裏長屋は「割長屋」と「棟割長屋」の2タイプがありました。割長屋は居室が横に連なった、現代のアパートに近い形。これに対して棟割長屋は二棟の平屋建アパートが背中合わせにくっついている状態。ということは両隣に加えて背後にもお隣さんがいる状態で、当然窓もありません。
間取りは4畳半1Kや6畳1Kロフト付のものがあったそうです。1Kですから現代ではどう考えても単身向けですが、ここに2〜4人の家族で住んでいたんだそうです。そんな状態ですから賃料は今より安くて、月収の1割程度です。 現在の集合住宅とはずいぶん違っていたんですね。 家主(イエヌシ=オーナー)と店子(タナコ=入居者)の関係も、今とはまったく異なるものでした。とかくオーナーの権限が強かったようで、たとえば・・・ この「寝床」に出てくるオーナーは、店子を集めては下手な義太夫を聞かせる迷惑な趣味を持っています。その義太夫の下手なことと言ったら、分かりやすく言うと「ドラえもん」に出てくるジャイアンの歌のようなもの。発表会(言わばジャイアンリサイタル)への参加を渋る入居者に一方的に退去命令まで出す横暴ぶりです。これはたまったもんじゃありませんね。 「小言幸兵衛」には、何でもかんでもとにかく難癖を付けて小言を垂れる面倒くさい男が登場します。この男も賃貸経営をしており、家を借りに来る入居希望者に色々と細かい質問をします。いわば入居審査です。人格否定に近いことまで言うので、せっかく現れた入居希望者も怒って帰ってしまったり。これまた大いに問題アリですね。
「人情八百屋」では、非常な賃料取り立ての末に借主夫婦を自殺に追い込んだオーナー宅に、同じ物件の他の入居者たちが大挙して押し寄せ、家を滅茶滅茶に壊した、というエピソードが語られます。自殺に追い込むオーナーもオーナーですが、殴り込んじゃう入居者もすごいですよね。 しかし、オーナーと入居者は対立してばかりでもありません。一緒に花見を楽しんだりもしたようです。「長屋の花見」ですね。
この噺では、オーナーの発案で入居者総出で上野の山へ花見に繰り出す様子が描かれます。残念ながら入居者同様オーナーも貧乏なので、お酒は番茶を薄めた「お茶け」、肴の玉子焼きは「たくあん漬」、かまぼこは「薄く半月切りにした大根」と、なんとも盛り上がらない宴ではありますが、のんびりのどかな関係性がしのばれて、微笑ましい一席です。 このように現代の賃貸住宅では考えられないことが、長屋噺のなかでは繰り広げられます。実際に起こったら大変ですが、すべて落語の中のお話。能天気に笑って楽しみましょう。面白いですよ、落語。皆さんも是非!
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